糖尿病網膜症診療
糖尿病網膜症診療
糖尿病網膜症は、糖尿病の合併症の1つです。糖尿病になってから数年から10年以上経過して発症すると言われています。血糖コントロールが不十分だと5~10年で網膜症が発症します。
糖尿病網膜症の初期段階の多くは自覚症状がなく、視力にも影響しません。しかし、眼底の血管には点状出血や毛細血管瘤、硬性白斑などの障害が起こり始めています。
下の方にぼんやりしているところは出血です。
糖尿病網膜症が進行すると、視力が急激に低下したり、モノを見ているときに黒い石のようなものが動いて見える「飛蚊症」になったりします。さらに進行すると黄斑浮腫や網膜剥離、血管新生緑内障へと悪化し失明にいたる場合もあります。糖尿病網膜症で一度視力が悪くなると、光を感じる神経がダメージを受けるため、治療をしても、もともとの良好な視力にまでは回復しにくいため、進行を止めて、それ以上の視力悪化を防ぐことが治療の目的となります。進行を最小限に抑えるために、糖尿病と診断されたら、同時に眼科を受診することが重要です。
糖尿病網膜症の治療法には、血糖値のコントロール、網膜光凝固、抗VEGF硝子体内注射、硝子体手術などがあります。
網膜光凝固とは、網膜にレーザー光を照射し、虚血に陥った網膜を凝固することで炎症性サイトカインを眼内から減少させる治療法です。外来通院で行うことができます。両目で約6~10回の治療を定期的に行う必要があります。黄斑浮腫を改善させる方法として抗VEGF薬(ルセンティス・アイリーア・バビースモなど)を白目の部分から眼球内の硝子体へと注射する方法もあります。これにより網膜毛細血管の壁を修復し網膜浮腫を抑制します。必要に応じて注射を繰り返すことで、視力の悪化を防ぎます。
硝子体出血や網膜剥離が起きれば、硝子体手術をする必要が出てきます。手術の緊急性、手術にかかる時間、手術後の回復度合いは病状によって様々です。
血管新生緑内障にまで進行してしまうと上記に挙げた治療に加えて緑内障の治療(抗緑内障点眼・レーザー・緑内障手術)も必要になり、失明の可能性も高くなってしまいます。